「いい家」をつくる会 会員コラム

2017年2月11日21時05分

屋根の上に載せた厄介な設備?

 「半永久的に電気を供給する乾電池ができたら」
 日経BP社クリーンテック研究所が、こんなテーマのセミナーを開くという。
 このように問いかけている。

 「もし、【常温核融合】(室温で、水素原子の核融合反応が起きる)が実現したら、
 エネルギーの仕組みはどれだけ変わるのでしょう。
 水を燃料にした発電装置が各家庭に設置され、送電線はいらなくなり、乾電池は半永久的に電力を供給し、電気自動車はどこまででも走り続ける……。
 当然、コストは大幅に下がり、電気代を考えなくてよいほどの理想的なエネルギー社会が実現したら、どんなことが起きるか、どんな可能性があるか」。

 「常温核融合」の可能性については、疑問視する意見もあるようだが、もし実現したら家づくりにどんな影響が出るのか想像してみた。

 真っ先に思い浮かんだのは、屋根の上の太陽光発電パネルのことだった。
 経済産業省は2012年、太陽光発電を必須とするゼロエネ(ZEH)住宅を標準化しようと支援事業を立ち上げた。
 柱は二つある。一つは、お客様が補助金を希望する場合、「ZEHビルダー」として登録した業者に建築を依頼しなければならない。
 二つは、登録ビルダーは2020年までに、受注する棟数の半分以上をゼロエネ住宅にするとホームページなどで公表しなければならない。
 お役人は、こうすれば登録はステータスとなり、ビルダーは実績づくりに励み普及に弾みがつくに違いないと考えたのだ。

 この政策に対して、太陽光発電の無理強いではないかと疑問を呈する意見も数多くあるのだが、地球温暖化防止という大義を持ち出されると小声にならざるを得ないようだ。

 ビルダーの中には、登録されたということは断熱技術が高く、省エネ設計に優れているからだと自慢するものもいる。

 ところが、経済産業省の絵図には工務店のお客様の動向を描き忘れていたようだ。
 工務店を選ぶお客様は、予算に関係なく、思ったほど太陽光発電に興味を示さない。
 125万円の補助金は、申し込み期間が限定されていることもあって希望は極めて少ない。
 いずれは、屋根の上に載せた厄介な設備となると予知しているかのようでもある。

 2016年10月の時点で、登録総数3593社のなんと80%近くは補助金申請をしていないと、専門紙が報じている。既築住宅のゼロエネ申請は、ゼロとも。
 こうなると、登録の意味だけでなく、事業の適否が問題になりかねない。

 工務店の多くは、太陽光パネルを屋根に設置するのにはいろいろ問題があることを承知している。だから、補助金を希望するお客様に対応できるように登録はしておくが、実績を増やすことが国のため、地球のためになると言われても納得できない店主は決して少なくない。
 実績がゼロの場合、登録取り消しもあり得るとプレッシャーを掛けられても、大量生産販売のハウスメーカーのように、儲かるものがいいものだと思えないのだ。

 いま実用化されている技術は、かつてはみんな夢だった。
 【常温核融合】という夢も実現すると信じるなら、補助金の獲得競争は止めて、もっと必要としている分野で使ってもらうことを望むのが賢明なのではなかろうか。

                     松井 修三

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