「いい家」をつくる会
コラム
2013年11月27日22時26分
極上の快適さと褒められた家

過日、打ち合わせのためにある方の家を訪問した。
8帖ほどの応接室に案内されると、エアコン暖房がうなりを上げて強風を吹きかけてきた。それでも、体感温度(気温+床・壁・天井の表面温度)が上がらない。これは、断熱・気密性能が悪く、部分・間欠暖房の家の共通の問題だ。ふだん使わない部屋は、冷え切ったままにせざるを得ない。
やがてご主人が現れて、話が始まった。
5分ほどしか経っていないのに、私は後頭部に降り注ぐエアコンの風が耐え難くなった。止めてもらおうと思ったが、ご主人は風で目をしょぼつかせながら寒そうに体を縮めている。その姿を目の前にしては、とても言い出せなかった。
私は、覚悟を決め要点を絞り約10分間で話を切り上げた。30分ほどの会談を望まれていたご主人には失礼とは思ったが、それ以上はどうにも耐え難かったからだ。
次の日、「涼温換気の家」にお住いのお客様を訪問した。
玄関に入ると、ホワーッとした温もりに全身が包まれた。広くゆったりした玄関ホールは吹き抜けになっていて、写真家として名の知られている弟さんが特殊なエッチングを施した鏡がひときわ目を引く。
その作品に見とれているところに現れたご主人は、なんと、素足だった。応接間に通されて、私はそっとスリッパを脱いでみた。
「この家は、床暖房でしたっけ?」
思わず、自分を疑うような質問をしてしまったほど温かさを感じた。
同行した久保田さんが、「本当に、そんな感じがするほど暖かいですね」と、とりなしてくれたので助かった。
「この家に建て替えて本当によかったと感謝する毎日ですよ」
「とにかく、極上の快適さです」
ご夫妻は、満面に笑みを浮かべ「満足」と「感謝」を何度も言われた。
体感温度が高い家は、実に気持ちのいいものだ。いや、この表現は的確ではない。どこにもほとんど温度差がないだけでなく、風とにおいを意識しないで、空気が気持ちよく感じられることが快適の質を高めるのだ。
「快適に影響するのは体感温度です」と話す学者や評論家がほとんどだか、それだけでは「極上」と褒められる快適さとはほど遠い。
松井 修三
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