「いい家」をつくる会
コラム
2012年3月5日09時06分
新三種の神器

(勉強会が終わるのを待つ兄弟)
「マツミの家には“新三種の神器”はつかないのですか?」
勉強会に参加される60代後半の方が、アンケートを書き終わるや否や社員に質問された。
「新三種の神器」とは、過日新聞の一面広告にダイワハウスが出していた太陽光発電パネル・蓄電池・HEMSのことである。
広告の説明によればこうなる。
「『新三種の神器』の概念を簡単にいうと、太陽光発電でエネルギーを創り、余れば蓄電池で貯めましょう。そして、HEMS(ヘムス)で家庭のエネルギーをコントロールし、省エネへの意欲がわくような仕掛けをつくる、ということです」
それらの神器は、ダイワハウスでなくてもほとんどのメーカーが扱っているし、工務店も例外ではない。
社員は、「ハイ、三種ともつけられます」と笑顔で答えた。
「標準装備でついている、というわけではないのですね」
「はい、太陽光発電は標準装備と言っているところもあるようですが、マツミでは有料になります」
お客様は、ややがっかりした口調で言った。
「昨日住宅展示場へ行ったら、今月中に契約すると太陽光発電をプレゼントしてくれるというメーカーがありました」
傍らで奥さんがさめた表情で言われた。
「それだけでなく、値引きもしてくれると言っていたわ。みんな注文とりたい一心でうまいことを言うのですよ」
ご主人は聞こえなかったように話を継いだ。
「太陽光で発電すると月々の電気代はほとんどタダになって、余った分を売るので年間で10万円ぐらい得するというのです。三組ほどのお客さんがいたのですが、その説明に皆さんたいへん感心していましたよ。マツミさんでも同じようになりますか?」
「プランによりけりです。屋根の形状によって太陽光パネルの大きさが決まるので・・・」
社員の説明を聞き終わると、ご主人は言った。
「われわれ年金生活者にとっては、ゼロエネルギーでしかも売電してお金がもらえるという話は魅力的です。建築費を尋ねたら、家そのものは希望の金額で建てられると言うのです。平均的には3000万円ぐらいだが、予算がなければ2000万円でも十分建てられる。いずれの場合でも、今月中に契約すれば太陽光発電はプレゼントになるそうです」
奥さんが明らかに白けた表情で投げやりに言った。
「屋根の上にお宝があったって、住み心地が悪かったらなんにもなりませんよ」と。
その言い方がきつかったのでご主人は奥さんの気持ちに合わせるように言葉の調子を変えた。
「たしかにね。いまの家は寒すぎて風呂に入るのがおっくうで、湯船につかると出たくなくなり、昨夜もついうとうとして女房に怒られたばっかりです」
奥さんが他人事のように言った。
「あのままほって置いたら、今日は大騒ぎになっていましたよ。私の友人のだんなさんは湯船に沈んで亡くなられたのですが、後がたいへんだったそうです。警察の検視が入り、奥さんが取り調べを受けたりで。三種の神器を取り付ければ、あなたがお風呂で眠ったりしなくなるのですか?」
「いやー、ごもっともです」
私は、思わず声を掛けてしまった。
「三種の神器については勉強会でも取り上げていますから、ぜひ聞いてください」
奥さんの顔がパーッと明るくなった。
松井 修三
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