「いい家」をつくる会
コラム
2014年11月13日07時31分
客の心を和ませるもの
とあるレストランで昼食を食べていたときのことだった。
空いた皿を下げる際に、若い女性の店員さんが「お預かりします」と言った。
一緒に食べていた友人も、私もその一語にギクッとした。友人が言った。
「私の高校生になる孫は、スマートホンでラインというツールを使って、ひっきりなしに友人とコミュニケーションを取るのだそうです。そのとき大事なのは、いかに言葉を省き、ユニークな造語を用いるかだそうです。文章を見せてもらいましたが、解説がないと意味が解らなかったです。
そして、自分の心情はスタンプという絵で表現する。いまの『お預かりします』もそんなところから出たのですかね」
「先月、イギリスに行ったのですが、店員さんは、『Finish?』とちょっと語尾を上げて尋ねるんです。直訳すれば『終わりか?』なのでしょうが、あの方がはるかに自然でいいですね」
「お預かりしますはないですよ。帰るときに、あの皿を返してくれるのでしょうかね」
友人の冗談に思わず笑ってしまった。
「普通には『お済ですか?』でしょうね」
「そうそう、私はあるレストランに入る度に気になることがあるのです。それは、店員さんがやってきて、両手をおへその辺りで重ねて、慇懃にいらっしゃいませと深々と頭を下げて挨拶することです。その姿勢は、滑稽なほど型どおりでしてね、心が籠められていない」
「それは、スーパーのレジの女性もやってますね。たしかに、あの姿勢にはいつもよそよそしさを感じます」
「私の女房に言わせると、そんなことを気にするのは年寄りの証拠だ、となるのですが、あんな仕草をマナーとして提案するコンサルタントがいるのでしょう。そして、それをサービスだと勘違いする経営者がいる。
彼女たちに共通しているのは、そのポーズをとる瞬間に笑顔がない。
『フィニッシュ?』には、たいがいウィンクするような微笑があるのです。どうです?おいしかったですか?というような。だから、気分がいい」。
心のこもった笑顔ほど、客の心を和ませるものはない。
松井 修三
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