ii-ie.com「いい家」をつくる会

「いい家」をつくる会
コラム

20128116時10分

涼温換気(商標登録済み)について

「省エネルギー、つまり、ランニングコストが安くて、しかも快適な冷暖房の方法は何か?」


住み心地の質は、構造・断熱・換気・冷暖房という四つの要素によって決まることは、高気密・高断熱の家造りに携わる造り手なら知らない人はいない。


「いい家」をつくる会では、構造は木造軸組みを、断熱の方法は外断熱を、換気の方法はセンターダクト方式の「新換気CD‐HEV」を、そして暖房の方法としては蓄熱式電気暖房機・スラブヒーター、冷房は個別対応のエアコンという組み合わせをベターなものとしてきている。

しかし、冷暖房の方法に関して、3.11以後造り手と住まい手の双方に迷いが生じていることは確かだ。電力供給への不安が毎日のようにマスコミに取り上げられている状況下で、これまでのような冷暖房の方法でいいのだろうかという疑問が生じるのは至極当然のことであろう。


そこで、冒頭の質問に対する答えが、待ったなしで求められている。


答えは、高効率の「エアコン」だ。


「光冷暖」や、床暖房を輻射冷房として併用する提案などがあるが、家庭において、省エネで冷暖房効果を速やかに発揮できるものとしてはエアコンに優るものは見当たらない。

しかし、エアコンは即効性がある半面で、快適に感じる時間が極めて短いという欠点がある。多くの人がエアコンから吹き出される冷・暖気流を快適と感じるのはものの15分程度であり、その後は不快と感じたり、嫌悪する場合すらある。


かといって、高気密・高断熱に造られた高性能な家であればあるほど、夏には人体が発する熱や生活の排熱・日射熱などが不快要因になるので、エアコンに頼らないことには快適を維持できない。

当会がお勧めしている「小屋裏エアコンによる間接冷房」はたいへん好評をいただいているが、間取りや広さや生活の仕方によって効果にかなりの差があって、それだけでは物足りなさがあることは否定できない。


そこで、マツミハウジングは、センターダクト方式の換気システムに、1台のエアコンをドッキングさせて家中をくまなく冷暖房できる方法について研究開発を進めてきた。すでに実証実験を2年前より横浜実験棟にて、また、昨年12月より私の自宅において、そして今年6月より社長宅にても開始している。


実際に体感してまず感動することは、各部屋のエアコンを用いることがないので、先に述べたようにそれらが吹き出す冷・暖気流の不快さをほとんど感じないで済む点だ。「冷暖」がマイルドになり「涼温」という感じになる。そのうち冷暖房を意識しなくなってしまう。快適の質が驚くばかりに向上する。熱帯夜が続いても、夜中にエアコン操作を行う必要がまったくなくなるから熟睡できる。


通常小屋裏に設置されるシステムの形状は、「全館空調」のように大掛かりで押し付けがましいものとは違ってコンパクトにまとめられている。第一種全熱交換型換気装置とエアコンの組み合わせ方は独自に開発したチャンバーBOXでドッキングされており、操作とフィルターの掃除と維持管理が簡単で、音も静かだ。


「涼温換気」が「冷暖」と称さないのは、「冷暖」よりもマイルドな快適さを発揮するからだ。先にも述べたとおり、エアコンからダイレクトに吹き出される気流は決して快適ではない。私のように「気流過敏症」にとっては、時に暴力的ですらある。自分が不快に感じるのに、お客様に「これしか方法がない」は不正直ではないか。


上質な住み心地を追求するかぎり、この問題をなんとしても解決しなければならない。


その一心がようやく実ったのである。


「涼温換気」の吹き出し口1ヶ所の大きさは、壁掛け式エアコン本体の表面積の15分の1程度であり、見た感じも比較にならないほどすっきりしてスマートだ。部屋の居住者が不要と感じた場合は、吹き出しグリルを閉じることで個別対応ができる。


冷え過ぎと感じたら温度設定を変えるか、スイッチを切ることになるが、要領はこれまでやってきた個別エアコンの扱いと同じである。「SA‐SHEの家」は、冬には蓄熱・保温、夏には蓄冷・保冷効果を発揮し、センターダクト方式による第一種全熱交換型換気との相乗効果で、エアコンのスイッチを切っても涼温効果が持続する。


もちろん「除湿」はできるが「加湿」は住人の工夫に委ねられている。「水フィルター」を用いる案もあるが、カビの発生を防ぐ手立てがないのでお勧めできない。


加湿に関しては様々な実験を行っているが、いちばん簡単で確実な方法は、適当な加湿器を各階のセンターダクトの吹き出し口の近くに置くことである。「新換気」の排気の力で湿気が放射状に拡散し、実験棟ではどの部屋でも40%前後以上の湿度を確保することができた。システムの内部に加湿機能を組み込む実験も行ったが、衛生的、かつ簡易に維持管理することがたいへん難しい。


さて、「涼温換気」の位置づけだが、これはオプションであって、選択の決定権者はお客様にある。「新換気SA‐SHEの家」にとって、いまのところは必需のものというわけではないが、とても魅力的な提案であることは間違いない。


「1台のエアコン」による効果は、通常では部屋だけのものだが「涼温換気」では家中で「同時に同様の効果」が得られる。廊下もトイレの中も、床下・小屋裏もだ。システムは極めて単純で明解なので、設計・施工に悩むこともなく、アフターメンテナンスの厄介さもない。


部屋の中からエアコンが姿を消すと、インテリアの雰囲気が大きく変わって見えるようになる。家の周りの屋外機も1台分を除いて消えるので、通路にゆとりができ、騒音で隣家に迷惑を掛ける心配も大幅に少なくなる。


さて、「涼温換気」はオプションと述べたが、国のエネルギー政策や制度の展開、または電力事情によっては、1台のエアコンで全館冷暖房をやってのける方法が必需になる可能性が大である。

そうなると、「涼温換気」を標準装備とし、個別エアコンや蓄熱式電気暖房機をオプション扱いにする方がベターであるということになりかねない。


いずれにしても、家庭内エネルギーの自給自足は5年以内に義務化されると考えておくべきだ。冷暖房に必要な電力は太陽光発電で賄うとなると、「1台のエアコン」は大きな価値を発揮することになる。


「涼温換気」は時代の要請を先取りするものであり、上質な住み心地を確保し、健康増進にも役立つという点で正に画期的なシステムと言えよう。


住宅業界では、「新三種の神器論」による集客合戦が熾烈さを増している。そこでは、太陽光発電・蓄電池・HEMSを装備することだけが目的とされていて、住み心地は忘れ去られている。


それでは「スマート(賢い)ハウス」とは言えない。真のスマートハウスは、上質な住み心地を確保するために三種の神器を活用して、「涼温換気」を行うことである。


松井 修三

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