ii-ie.com「いい家」をつくる会

「いい家」をつくる会
コラム

201291505時06分

英国建築技術研究所

昨日(現地13日)、英国建築技術研究所を訪問した。

低所得者層向けに開発されたという6棟ほどの最先端省エネ住宅のデザインは、極めて無機質的でつまらなく、チャールズ皇太子が見学に来て嘆かれたという心境が納得できた。


どの建物も玄関に入った瞬間の空気が、「新換気SA-SHEの家」より間違いなく劣っている。よどみ感があり、「新築の臭い」もある。これでは、設計思想や建材類の選択に盛んに用いられているサステナブルやオーガニックという言葉が色あせたものに感じられてしまう。


各々の感性を大切にするため、久保田さんとは別々の建物を見て歩き、昼食のときに感想を話し合った。

久保田さんは開口一番、「中にいるのが苦しく感じられる家が数軒ありました」と言った。さらに、「昨夜お邪魔させていただいた荒川さんのお家の方が、はるかに空気が気持ちよかったです」と。

私も同感したので、荒川さんは困惑顔して言った。

「松井さんにはセンターシャフト的な発想を取り組み、ロケーションもすばらしい家だとほめられましたが、なんと言っても50年以上昔の建物ですからね。センターシャフトを用いた暖房換気は今では使っていませんので換気はごく自然な窓開け換気なのですよ。私の家の方が最先端住宅よりも空気が気持ちいいなんて、ちょっとおかしな感じがします」

そこで私はこんな質問をしてみた。

「ところで荒川さん、いま見てきた住宅の中で、これだけはデザインがまあまあだとチャールズ皇太子が認めたという家(写真)と、ご自宅を等価交換してくれると言われたらどうしますか?」

「そうですね。まず、断るでしょう。断熱性能では比較にもなりませんが、お二人が言われるように空気の質感が合いませんね。妻も同じようなことを言うと思います」

空気の質という点で、最先端住宅は50年前に建てられた家にかなわない。これは考えさせられる話だった。イギリスでは、新築住宅の着工数は年間で10万戸以下、中古は2000万戸以上と聞く。よほど換気システムを考えないと、中古住宅の断熱改修は満足が得られにくいのではなかろうか。


見終わって、事務所で広報担当のグラハム・ハードキャッスルさんと会談した。

「ここでの収益は、最先端住宅造りの研究開発に使われています。学生も多いですが、世界中から見学者や企業関係の方々が年間2万人近くやってきます。最近ではキャメロン首相もやってきましたよ」

氏は誇らしげに言われた。


換気システムに関する話には、要領を得ないことが多かった。

私の不満顔を察してか、氏は歯医者の家を見せてくれた。そこでは第一種換気装置を用いている。暖房は南側の壁体に設置された太陽光の集熱パネルからの熱、それにヒートポンプエアコンを加えた暖気を(「涼温換気」とは似て非なのものだが)換気装置の手前でミックスして、室内からのリターン空気とともに各室の天井から給気する。そして、汚れた空気は浴室・トイレから排出する。

肝心な換気の経路は「新換気」とは逆であり、従来のやり方である。

氏は、「換気回数をいかに増やすかが重要だ」と力説されたが、これでは「新換気の家」で生活している私と久保田さん、そして「窓開け換気」の荒川さんにとっても満足できるものではなかった。


今日はこれから、いよいよこの旅行の目玉であるリチャード・ホークス設計事務所を訪問する。外は曇りで18度ぐらい。寒そうに見える。

「逆転の発想」がどのような評価を受けるか、楽しみである。


松井 修三

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