ii-ie.com「いい家」をつくる会

「いい家」をつくる会
コラム

201821218時12分

「鈍感な世界に生きる敏感な人たち」

この題名の本を書いたのは、デンマークのイルセ・サン(デイスカヴァー・トウェンティワン2016年10月15日発行)。

著者は、「世の中の5人に1人がHSP(High Sensitive Person:とても敏感な人)だといわれています。HSPは、決して病気ではありません。HSPという概念は、アメリカの精神分析医で学者のエレイン・アーロンによって、1996年に提唱されたもので、人を男性と女性というように性別で二つに分けるように、とても敏感なタイプと、タフなタイプの二つに分けただけのことです」という。


17年前のことを思い出した。

私は、2001年1月23日、朝日新聞の「天声人語」に「外断熱しかやらない工務店主」として取り上げられた。 それを読んで、3時間後に母を伴って私の前に現れた人が、後に「さらに『いい家』を求めて」を書いた久保田紀子さんだった。


そのとき、交わされた会話が第一部の「家にいじめられる人」に書かれている。

<快適で満足できる住み心地を得るためには、さらに換気と冷暖房の設計と実施が必要です。そして、それがいいかどうかは、データや理論ではなく住む人の感受性、つまり理屈ではなくて肌に合うか否かで判断されるのです。久保田さんは、感受性が優れているようですね。寒さ、暑さ、臭いに敏感でしょ?」

「ええ、暑さはかなり我慢できるのですが、寒さは苦手です」

「小さいときから、感受性の強い子でしたよ」

母は、そうであったがために子育てに苦労したと言いたかったようだ。松井さんはすぐに察したかのように、

「私は、男の子を四人育てたのですが、長男がそうでした。いや、私自身がそうだったのです。母は、よく言っていましたよ。気難しくて、扱いにくい子だったと。一日も早く嫁さんに渡したかったと、結婚したすぐ後で女房に言ったそうです。今の時代でしたら、母親がそんなことを告白したら、嫁さんに逃げ出されるところですね」

母は、大声で笑い出した。笑いがおさまると、松井さんはしんみりと言った。

「敏感な人ほど、家にいじめられるのです」と。

「体の弱い人は、敏感です。これまでの家造りは、その人たちに対して鈍感すぎていました。温度にも、湿度にも、空気や音・においに対しても。住宅展示場も、住宅雑誌も、設計士も、建築家と称する人たちも鈍感で無知であり過ぎます」>


この私の考えは、今も変わらない。なぜなら、ほとんどの造り手たちは、「感受性のような主観的な価値にこだわったら、商売にならない」と確信した家づくりを続けているからだ。

鈍感な造り手たちが、自分たちの都合がいいように建てた家で、敏感な人たちは我慢し諦めて、ストレスに耐えるのだ。この構図は、「ゼロ・エネ」「AI」「IoT」の時代、ますますはっきりしてきている。


イルセさんは書いている。

「HSPは環境が整っていない状況下では困難に見舞われますが、一方で、適切な環境下では、HSPでない人たちよりも、その環境を楽しめるということが研究で裏付けられています」


「環境」を「住み心地」に置き換えると合点がいく。

「さらに『いい家』を求めて」という本は、多感な造り手と、「とても敏感」な住まい手とが出会って、住み心地の質の向上に努力し続けた物語である。


4月に「改定6版」が発売となる。

住み心地が良い家、主婦が喜び、輝く家を手に入れるには、理論や数値よりも感性が大事だと著者は熱く語っている。これから家を建てる人たちだけでなく、家造りに携わる人たちにぜひ読んでいただきたい。


                 松井 修三


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