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2018年3月25日

「重老齢社会」が来る

 日本の高齢化が新たな局面に入る。75歳以上の後期高齢者が65から74歳の前期高齢者を間もなく上回り、高齢者全体の半数を超える。寝たきりや認知症など身体的な衰えが強まりがちな後期高齢者が急増する「重老齢社会」の到来。定年退職後も元気なアクティブシニアが活躍する構図は次第に薄まり、高齢者をどう支えるのかがより深刻に問われる時代が来る。
 総務省の人口推計によると、2月1日時点で75歳以上は1764万人、65歳から74歳は1766万人。寿命が伸びていることから、後期高齢者は平均月3万人ペースで増加しており、早ければ近く発表される3月1日時点の推計で前期高齢者を上回る可能性がある。今後、75歳以上はどんどん増え、高齢者に占める割合は上がっていく。
 政府は人口に占める65歳以上の割合を「高齢化率」として算出している。1947年から49年生まれの「団塊の世代」が2012年に65歳に到達し始めてから高齢化率は急速に上がり、2017年時点では27%になった。
 世界保健機関(WHO)などの定義では7%超の「高齢化社会」、14%超の「高齢社会」を上回り、21%超の「超高齢社会」と位置づけられる。
 ただ今の日本では医療の発展などにより65歳を超えても元気な高齢者は多い。豊富な資産を持ち、積極的に旅行に出かけたり趣味に打ち込んだりするアクティブシニアは、むしろ個人消費のけん引役にもなっていた。個人消費の約半分は60歳以上の高齢者が占める。
 そんな状況も後期高齢者が中心になることで変わりかねない。
 大きく変わるのが介護だ。前期高齢者で要介護認定されている人は3%だが、後期高齢者になると23%に跳ね上がる。高齢者が高齢者を介護する「老々介護」は、75歳以上になると自宅介護の3割を占めるようになる。
 特に首都圏で介護の問題は今後深刻になる。東京は今後5年ごとに20万から30万人という急ピッチで後期高齢者が増えていく。東京都は昨年「超高齢社会における東京のあり方懇談会」を発足し、老々介護や空き家問題などの議論を始めている。
 認知症のお年寄りの急増も、お金の流れに大きな影響を与える。
 「日銀でも年金基金でもなく、認知症の人が有価証券の最大の保有者になる可能性がある」。みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミストは気をもむ。
 厚生労働省が補助する研究によると。認知症の人は60代後半で約2%、70代前半で約5%なのに対し、70代後半になると約10%とぐっとあがる。株式などの有価証券の多くは70歳以上が保有しており、持ち主が認知症などになれば運用が凍結される可能性が高い。
 2035年には最大150兆円の有価証券を認知症の高齢者が保有すると高田氏は試算し、「生きたお金が回らなくなれば金融面からの成長が止まる」と懸念する。
 財政の持続性などを研究する慶應義塾大学の小林慶一郎教授は「これからは高齢者を支える負担が増す『重老齢社会』といえる局面に入る。金融や働き方、財政など様々な分野で社会課題からイノベーションを生み出す工夫が要る」と指摘する。


     2018年3月18日 日本経済新聞

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