ii-ie.com「いい家」をつくる会

海外視察旅行記
世界に誇れる、
住み心地いちばんの家を目指して

2008年8月
アメリカ北アメリカ編

アメリカ西海岸の新築住宅視察

「換気」から見る
「アメリカ西海岸の新築住宅」
その1

アメリカ住宅視察旅行は無事終わり、昨日帰国した。

目的は、マツミハウジングが開発した「新換気システム」以上に優れたものがあるかを調査することにあった。それには、ポートランドで開催される「ストリート・オブ・ドリームス」を見学するのが一番だ。最新の換気システムが装備されているに違いない。

パンフレットには、「今年のショーは、飛び切りのロケーションにきっと興奮されるでしょう」と書いてある。

(この土地は、坪当たり約10万円)


最初に見た家は、広さがガレージを含めて約300坪で、お値段が約3億2千万円。土地代が2千万円とすると坪当たり100万円。80以上の形の異なる窓があり、そのいずれからも100万ドルの景色が見えると自慢していた。

眼下にはポートランドの街が一望でき、目を転ずれば富士山に良く似たフッド山をはじめ数々の山々が展望できる。しかし景色に興味がないとなると、その前にロサンゼルスで7億円から9億円ほどで売られているドラマチックな最高級住宅をいくつか見た後だったので、感動するものがなかった。

「景色が普通で家具がないとしたら・・・」と、どうしても思ってしまうのだ。

我々が関心を持っていたのは換気システムなのだが、ロスの最高級住宅と同じでそこもエアコンによる空気循環システムだった。つまり、換気はキッチンフードの局所だけということだ。

玄関を入った瞬間から鼻にツーンとくる刺激臭が気になった。

(床と手すりの間の隙間が怖い)


建築中の現場もいくつか見歩いた。10年前と比べて、特に変わったところは見受けられなかった。相変わらずの雑な構造と、大雑把なグラスウール断熱の充填工法であり、驚くばかりの現場の乱雑さも同じだった。

インスペクター制度がしつかりしているから、欠陥住宅は造られず安心できるとわが国の識者たちは言う。

はたしてそうなのだろうか?


●インスペクター制度とは

工事の工程ごとに第三者による検査を行い、不備や不良個所がないことを確認したうえで次の工程に進むことを義務付ける制度。設計者でも施工者でもない第三者が、建築主に直接、雇われて検査するのが特徴である。

米国カリフォルニア州では、1933年のロングビーチ地震を機に、37年に制度ができ、UBC(Uniform Building Code)に規定されている。インスペクターには、州あるいは市の職員である公的インスペクターと、民間で州あるいは市に登録されたスペシャルインスペクターの2種類がある。公的インスペクターによる検査は、工事を6〜8段階に分けて、各段階が終了するたびに、施工者がインスペクターに検査を求める。公共工事や一定規模以上の民間工事では、これに加えて、スペシャルインスペクターによる特別検査が必要になる。これは建築主がスペシャルインスペクターを直接雇用し、特別検査が必要な工事の施工中には常駐して、検査結果の報告書を建築主や市(州)、設計者に交付しなければならない。(日経アーキテクチュアーより)

「アメリカ西海岸の新築住宅」
その2

ロス近郊で約8億円という売値の家を見た。

延べ面積約180坪、敷地面積約630坪。単純に家の広さで割ると、坪当たり444万円となる。土地の値段をおおよそ30%とすると、家の値段は坪当たり310万円で総額は5億5千8百万円。

家具を含めたインテリアと外構工事(プールを含めて)に2億円かかったとしよう。建物そのものはどうみても1億円あれば十分出来そうだ。残りの2億5千8百万円が粗利益で、そこから販売管理費が引かれたものが利益となるのだろう。

ところが、サブプライムローン問題でさっぱり売れなくなってしまった。

事務所にいた中年のでっぷりとした営業マンは、藁をもすがるという思いをいっぱいに込めた最高の笑顔で我々一行を迎え入れてくれた。

(高級住宅では、このようなスタイルが多い。正面奥がガス台、レンジフードが家具のよう。反対側に流し台があって、それを囲むように椅子が配置されている。ディナー用に別のところに豪華なテーブルが置かれている)


完成してから1年以上になるようだ。5棟現場なのだが、客は1組もいなかった。内部をしばらく歩いていると、空気が気になって仕方がなかった。マツミの体感ハウスと比べて明らかに質が悪く感じられたからである。

そこで換気装置を探したが見当たらない。先ほどの営業マンに尋ねたところ、セントラル空調方式なのだが換気システムがなく、室内の空気はただ循環しているだけだと言う。

(脚立がないとフィルターの交換ができない。高齢者には無理)


そんなバカな、と思ったが事実だった。廊下の壁や天井に設けられた空気の吸い込み口にはフィルターがあってホコリを除去しているが微小な浮遊粉塵は通過し、エアコンで冷やされて各所の天井から吹き出されている。つまり、室内空気は外からの新鮮空気を取り入れることなく循環しているだけなのだ。

(フィルターだけでなくダクトの内部にも埃が見られる)


パーティーなどで空気が汚れたらどうするのかと尋ねると、彼はおかしなことを聞くものだという顔をして、「窓を適当に開ける」と答えた。

別の現場でも同じ質問をしたところ、「家の中の空気は、外よりもきれいなのだ」という答えが返ってきた。

アメリカにはEnvironmental Jastice(環境正義)を唱える有名な環境保護庁(EPA)があるというのに、いったいこれはどういうことなのだ。換気を疎かにする家造りが堂々と行われているとは驚きだ。

これでは住人は、サブプライムローンで資産も失うだけでなく、健康まで損なわれているかもしれない。


その夜、空気質に超敏感な久保田さんに電話して、アメリカの住宅の室内空気質に関して調べてもらうことにした。

「アメリカ西海岸の新築住宅」
その3

久保田さんからのメールである。

要約すると、住宅の「換気」はわが国の方が進んでいて、真剣に取り組んでいるということだ。

オレゴン州では法律で義務付けたとされているが、実際には換気装置のない家が建てられている。最先端テクノロジーを盛り込んだというポートランドの住宅ショーで、我々は換気システムを装備した家を見ることができなかった。

インスペクター制度は、いったいどのように機能しているのだろうか?

 

大阪在住のコピーライターである田中実典(たなかみのり)さんが、松下の換気装置をアメリカに売り込んだ小松青磁さんについてルポしているサイトを見つけました。

 

<小松さんは1994年から6年間、アメリカに単身で乗り込んで販売活動をした。当時のアメリカの換気扇(装置のことだと思います)は価格が重視されていたので、性能と静音性を売りにした。当初は現地商品の3倍もの価格に見向きもされなかったが、

「“コンシューマーレポート”というメジャーな雑誌が、換気扇でナンバー1の製品だと認めてくれたり、省エネ推奨マークとして有名な『エナジー・スター』に他社に先駆けて換気扇として認定されたりということもあって、それからはおもしろいように順調でしたね。販売スタートの年の売り上げは2,000台でしたけど、12年後の今年2006年には、50万台を超えそうです」

「でもね、まだまだ換気に対する社会全体の認識が追いついていないなあ、と思いました。私が事務所を開いた当時、換気に関しては世界でも日本が一番進んでいたんです。アメリカもまだ、バスルーム、トイレ、キッチンだけを換気すればいいという局所換気の考え方がメインでね。だけど実際にはシックハウス症候群に悩む人が大勢いて・・・状況はかつての日本と同じだったんです。

24時間換気をすることで、多くに人の悩みが解消できることはわかっていましたから、現地メーカーと協力して、各州政府に24時間換気の重要性を説いてまわったんです」中略

「そして1995年ついにワシントン州とオレゴン州で24時間換気が義務づけられることになったんです>とあります。

松下は素晴らしいタイミングでアメリカに乗り込んだのですね。

ロサンゼルスからポートランドに移動されると、たぶん宿泊予定のホテルの近くだと思いますが、Air Advice,Inc(アメリカ・オレゴン州ポートランド)社があります。

2006年11月27日に日本では神栄株式会社(神戸市中央区)が、室内空気環境のモニタリング事業を共同で行うために業務提携に合意しています。

そのエアアドバイスジャパンのサイトに会社創立の謂れが書かれています。

(床に近い壁に設けられた空気の吸い込み口。マツミの家なら100%クレームになるほどの音がする。フィルターを枠内にかぶせて蓋をする)

(床下点検口から覗いてみた。床一面に黒色の防湿シートを敷き詰めている。)

(上の写真のダクトが見える。床下がない場合には天井の懐がダクトスペースに用いられる。それらを観察していると、マツミハウジングが開発した新換気システムCS−HVSが画期的なものであり、合理的で優れていることがよく分かる)

 

<AirAdviceの創始者の一人であるJohn Skardonは、喘息で苦しむ自分の妻を見て、その発作の原因にもなり得る室内の浮遊粒子をモニターすることを考えましたが、検知するための装置は非常に高価で、簡便な検知方法は当時見つかりませんでした。

ところが1999年までに、安価に浮遊粒子を検知する技術ができているのを知り、一般家庭でも簡便に室内空気環境をモニターできる装置の開発と喘息やアレルギーに苦しむ家庭用のサービスを目指しAirAdvice,Inc.を創業しました。もう一人の共同創始者MeindertKleefstraはエンニジアとして現在のIAQモニターの原型を作りました。

AirAdviceはまず一般家庭にこのモニターを販売しました。室内空気による健康被害を心配する人々は診断ツールとしてこれを活用し評判を呼びました。

その後、空調業者がこのIAQモニターを使ったシステムが、自分の顧客との対話のためのツールとして最適であることに気付き、さらに自分のセールスに活用できると評価し始めました。

今日でも一般家庭へのサービス提供しながらも、空調業者や空調機器メーカーとの提携事業などを通じて住まいの室内空気環境に関わり続けています。」

「エア・アドバイスのサービスでは、住宅の室内環境を『健康』『快適』『安全』の3つのキーワードで切り分け、『浮遊粒子(ホコリ)』、『VOC』、『温度』『湿度』『一酸化炭素』『二酸化炭素』の6要素を計測する6つのセンサと通信機器をコンパクトに一体化した『IAQモニター』を購入することから始まります」

とあり、さらに換気に触れている箇所は参考になると思います。

(地下室に備えられたエアコンの本体。左側の円筒型のものは電気温水器)

 

「米国環境保護局(EPA)は室内空気環境の汚染を健康被害の5番目に位置づけています。

今日の高気密住宅は省エネルギーを主眼としていますが、適切な換気設備が装備されているとは限らず、フィルター設備があったとしても、室内の空気を循環させているだけです。古いタイプの家はというと、すき間が多いため、ロケーションによっては外の汚染物質を中に入れていることもあったと思われます。

一般的な室内空気環境が屋外よりも2−5倍汚れています。時には100倍汚れているケースもあると言われています。このことをご存じの方は多くありません。

アメリカ人のほとんどは90%の時間を室内で過ごすと言われています。また、3軒に1軒の割合で、喘息やアレルギーで悩む家庭があると言われています。清浄で快適な室内空気環境はますます求められてきています>

 

そこで思ったのですが、多くの家庭(既に50,000件以上)の室内空気環境をモニターしているこの会社を訪問できれば、住宅を売る側からではなく、暮らす側から、アメリカ住宅の換気について意見や問題点を聞くことができるのではないでしょうか?

 

さすが久保田さんだ。素晴らしいレポートである。