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海外視察旅行記
世界に誇れる、
住み心地いちばんの家を目指して

2008年8月
アメリカ北アメリカ編

アメリカ西海岸の新築住宅視察

「アメリカ西海岸の新築住宅」
その4

ロサンゼルスから2時間半ほどのフライトで正午近くにポートランドに入った。

なんと気温は38度。全米で二番目となる記録的な猛暑だった。日差しは強いが、日陰に入るとそんなに暑さを感じないでいられるのは空気が乾燥しているせいだ。東京の夏とは違って、肌にまとわりつくような熱風がない。水道水がおいしくて、安心して飲める。街角のいたるところに色とりどりの花が咲いているのが印象的だ。6月に開かれるバラ祭りは有名。ポートランドには消費税がなく、ゴキブリもいないそうだ。

冬になると、日本の梅雨と同じように、しとしとと小雨が降る日が多くなる。


翌日、久保田さんの提案に従って、エアー・アドバイス社に午後4時に訪問することになった。

午前中に、ポートランドの街の中心から車で30分ほどのところに建築中の建売現場を見に行った。

「アメリカ西海岸の新築住宅」その4-1

価格帯が3000万円ぐらいで、シンプルな3DK30坪前後の広さの家が15棟建つ予定。半分は完成していたがまだ1棟も売れていなかった。


現場を見ていてつくづく思うことは、最近の日本ほどに安全管理、整理整頓、掃除と片付けが行き届いているところはないということだ。

アメリカの現場では、掃除と片付けは最後に一回だけ行うのだろうか?

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この現場に建てられる家にはエアコンがない。しかし、第一種換気装置があった。現場監督の話では、「暑いのはせいぜい2週間なのだから、その間は窓を開ければよい。それよりも換気装置をつける方が付加価値となる」という。

エアーアドバイス社の影響があるのかもしれない。

今回の旅で、我々が換気装置を備えた家を見たのはそこだけだった。暖房は、壁埋め込み式の電気温風機が各部屋についていた。

「アメリカ西海岸の新築住宅」その4-4
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床下の断熱工事は最後にもぐって行うそうだ。たいへんな作業だ。専門業者だからできるのであって、日本の大工さんは引き受けないだろう。

工事現場で、床下、壁の中、小屋裏を観察していると、内断熱(充填式)では「いい家」ができないと、つくづく納得できる。

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それにしても、インスペクター制度の下で造られている家とはとても思えない。

日本の性能評価機関の検査の方がはるかに内容が高度であり、厳格だ。

何よりも違うのは、家造りに対するお客様のこだわりの強さだと思う。それなくして、「いい家」は造られない。

10年で移り住むことを前提にするなら、構造・断熱の方法・依頼先は、さして重要ではなくなる。

つまり、住み心地という根源的な価値は二の次で、デザインやインテリア、設備や機能という付加価値が優先する。現在アメリカでは、本来、年月の経過とともに価値が薄れていくはずのそれらの付加価値が、バブル的に過大評価される中古住宅市場がサブプライムローンに揺さぶられ、崩壊しつつある。それは、もともと価値薄きものがそれ相応の価格に収斂していくということであり、私には当然のことに思えた。

真に「いい家」は、どのような時代にも根源的な価値を失うことはない。

社員たちは、住む人の幸せを心から願って、より住み心地の良い家を造ることの大切さを再確認させられたことだろう。

「新換気は、すばらしいですね」彼らは異口同音に言った。

国は、最高を求め、現場は最低を造る。今回の旅で痛感した。