海外視察旅行記
世界に誇れる、
住み心地いちばんの家を目指して
2007年8月
ドイツ編
ヨーロッパ建築を訪ねて(ドイツ)
ロマンチック街道−2
フランクフルト空港からアウトバーンを走ること約2時間、午後6時半頃にヴュルツブルクに着いた。そこはロマンチック街道の入り口にあたる街だ。
夕食のためにホテルの外に出てみたのだが、殺風景でどこの店にも入る気がしなかった。ホテルに戻って食事を取ったのだが、驚くばかりに塩味が強くて食べられない。ドイツ最初の食事は惨憺たるものだった。
「ここに二泊するのは間違っている。明日はローテンブルグに向かうことにしよう」
会話はしなかったが、久保田さんも同じことを考えていたという。
翌日は晴天。せっかく来たのだから世界遺産であるレジデンツだけは見て来よう、そう思い直してコンサルジュに英語が話せるタクシーを呼んでもらった。
やってきた運転手は、我々を車に乗せないで歩いて行こうと言う。昨夜とは反対側の方角に5分ほど歩くと、情景はエキサイティングなものに一変した。
マイン川にかかるアルテマイン橋は人出にあふれ、橋の向こうには大聖堂がそびえ、振り向くと丘の上に堂々たるマリエンベルク要塞が見えた。運転手は、フランケンワインの最も有名なワイナリーが経営しているビュルガーシュピタールに案内してくれた。
そしてワインを飲んでからレジデンツに行ったのだが、階段ホールの天井に描かれた世界最大級のフレスコ画を見上げていたら目まいがした。ワインのせいかと思い、しばし手すりにつかまってから再び見上げたのだが、やはり目まいがした。階段という不安定な位置から見上げるには、天井画のスケールがあまりにも凄過ぎるのだ。
ヴュルツブルクは、さすがロマンチック街道起点の街だけのことはあって、見所がたくさんあった。
ロマンチック街道−3
ロマンチック街道の華、それはローテンブルグ。
時は中世。4人のお金持ちの邸宅が建てられた。その一つが現在ホテルとして利用されている。その名は、アイゼンフート。手前から5軒目の建物がそれ。
そこに昼ごろ到着。湿度54%、温度22度。うす曇りながらとても気持ちが良い気候。
2軒目の建物を路地側から撮影した。
このような装飾看板を見て歩くだけでも楽しい。
13世紀に建てられたという市庁舎の塔に上って撮影した。その塔に上がるには、かなりの覚悟が必要だ。高所恐怖症の人はもちろんだが、地震に対する不安性の人は上ってはならない。それと、腹と腰周りが大きすぎる人。高血圧もしくは心臓に自信がない人。最上部の階段があまりにも急であり、巾が狭いので他人の迷惑となる可能性が大である。
ロマンチック街道−4
〔その1〕
ディンケルスビュールは、ローテンブルクよりもさらに小さな街だ。
半日も掛ければ街の隅々まで見られる。
そこを訪れた目的は、1440年に建てられたというドイチェスハウスに宿泊することだった。部屋数はわずか10しかない。木組み白壁造りではドイツで最も美しい建物とされている。
私には密かな願望があった。それは、小屋裏を見ることだ。いったいどんな風になっているのだろうか?
フロントに許可を求めて断られたらお仕舞いだ、そう思ったので部屋に荷物を置くや否やすぐに小屋裏探訪に出向いた。板張りの床がギシギシと鳴り、隠密行動はとても無理である。宝島に探検に出かけた少年のように胸がときめく。幸いなことに、誰にも遭わず小屋裏へ上がれる部屋を発見した。
急勾配のハシゴを上がって小屋裏の頂点に立った瞬間、興奮してカメラを落としそうになった。
そこには500年以上という長い時がかもし出す独特の雰囲気があった。雨漏りで腐った部材を差し替えた形跡があちこちに見て取れる。そのやり方は、地震をまったく想定していないし格別の工夫もない。それだけに興味をそそられる。
床の一部に5世紀分と思える黒ずんだホコリがたまっているところがあった。想像が、世紀単位で過去に遡って行く。私は、ずっとその場に座っていたくなった。